顔を地に付けて彼を伏し拝んだ
ときに、ヨセフはこの地の権力者であり、この地のすべての人に穀物を売る者であった。ヨセフの兄弟たちはやって来て、顔を地に付けて彼を伏し拝んだ。(創世記42:6)
いよいよここから、「ヨセフ物語」のクライマックスへと向かっていく。
ひどい飢饉のなか、ヤコブはエジプトに穀物を買いに行くよう、息子たちに指示した。
末息子のベニヤミンを残し、兄弟十人がエジプトに出向く。
そこで全権を握っていたのがヨセフだ。
彼らはヨセフの前に進み出て、彼を伏し拝んだ。
かつてヨセフが見た夢が、現実となった。
ヨセフは兄弟たちを見て、それと分かったが、彼らに対して見知らぬ者のようにふるまい、荒々しいことばで彼らに言った。「おまえたちはどこから来たのか。」(7)
彼らにスパイの嫌疑をかけるヨセフに対し、兄弟たちはヨセフとも知らず、必死に弁明する。
ヨセフはスパイの嫌疑を解かれたければ、「一人だけが国に戻り、弟を連れて帰って来る」という条件を出す(16)。
しかし、三日間彼らを監禁している間に考えを変えたのだろう、「一人だけをここに残して、食糧を持って国に戻り、弟を連れて帰って来る」という条件にした(19-20)。
そのほうが、父ヤコブのもとに多くの食糧を運ぶことができる。
しかし兄弟たちはそんなヨセフの配慮には思い至らず、自分たちだけ監禁され、父の最愛のベニヤミンを連れて来なければならないことに苦しむ。
彼らは互いに言った。「まったく、われわれは弟のことで罰を受けているのだ。あれが、あわれみを求めたとき、その心の苦しみを見ながら、聞き入れなかった。それで、われわれはこんな苦しみにあっているのだ。」(21)
ヨセフを売り飛ばした罰を受けていると嘆く兄弟たちを見て、ヨセフは隠れて泣いた。
国に戻る彼らの食糧袋に、彼らが持参した銀を戻し入れるようヨセフは指示を出す。
ヤコブのもとに戻った兄弟たちは、事のいきさつを説明した。
さらに、全員の銀が戻されていることに気づいて、激しく動揺する。
彼らも父も、この銀の包みを見て恐れた。父ヤコブは言った。「おまえたちは、すでに私に子を失わせた。ヨセフはいなくなり、シメオンもいなくなった。そして今、ベニヤミンまで取ろうとしている。こんなことがみな、私に降りかかってきたのだ。」(35-36)
ヤコブは、「ベニヤミンは行かせない」と言い張る。
「道中で、もし彼にわざわいが降りかかれば、おまえたちは、この白髪頭の私を、悲しみながらよみに下らせることになるのだ。」(38)
なぜ、自分たちだけがこんな恐ろしい扱いを受けるのだろうか。
なぜ、こんなに苦しいことが降りかかるのだろうか。
これは罰なのだ、よみに下らせる呪いなのだ・・・。
しかし、事実はまったくその逆だった。
彼らが天罰のように、呪いのようにとらえたことは、神の特別な守りそのものだったのだ。
わたしたちもまた、そのような大きな勘違いをしているかもしれない。
「わたし自身、あなたがたのために立てている計画をよく知っている――主のことば――。それはわざわいではなく平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ。」(エレミヤ29:11)