長子の権利
するとヤコブは、「今すぐ私に、あなたの長子の権利を売ってください」と言った。エサウは、「見てくれ。私は死にそうだ。長子の権利など、私にとって何になろう」と言った。(創世記25:31-32)
イサクとリベカ夫妻も、長年子どもに恵まれなかった。
イサクは、自分の妻のために主に祈った。彼女が不妊の女だったからである。主は彼の祈りを聞き入れ、妻リベカは身ごもった。(21)
胎内には双子が宿ったが、「腹の中でぶつかり合う」(22)ような状態で、リベカは先行きを案じた。
すると主は彼女に言われた。「二つの国があなたの体内にあり、二つの国民があなたから分かれ出る。一つの国民は、もう一つの国民より強く、兄が弟に仕える。」(23)
このことは主から出ていた。
二卵性ということだろう。
さらに両親の愛情も違っていた。
イサクはエサウを愛していた。猟の獲物を好んでいたからである。しかし、リベカはヤコブを愛していた。(28)
このあたりの複雑な事情も、後々のトラブルの原因になったと思われる。
ヤコブは同じ日に生まれたにもかかわらず、エサウが長子で自分は次男であることに不満を持っていたかもしれない。
隙あらば長子の権利を奪おうと考えていたのではないか。
そこに腹ペコの兄とともに、チャンスがやって来た。
エサウがクタクタで気分も荒れているところを見計らって、すっと長子の権利の話を持ち出した。
「あー、いま、そんなこと知るか!とにかく何か食わせてくれ!」
結局、これば大きな失敗となる。
へブル書の著者はこの事件を、“欲”に駆られて汚されることのないようにとの忠告として取り上げている。
一時の欲が大きな禍根となりかねないことを、教えられる。
だれも神の恵みから落ちないように、また、苦い根が生え出て悩ませたり、これによって多くの人が汚されたりしないように、気をつけなさい。また、だれも、一杯の食物と引き替えに自分の長子の権利を売ったエサウのように、淫らな者、俗悪な者にならないようにしなさい。(ヘブル12:15-16)